組織上流Business Analystの仕事 – 渡米から2か月の概観

プロフィール

Amazon USで仕事を始めてから2か月。徐々に成果も出始めてきた中で、この記事では私の仕事内容を概観します。

以前私が書いた記事を多くの方にご覧頂けて非常に嬉しかった一方で、「Business Analystという職種と交わる機会がない」、「正直この職種が何やってるか知らない」という反応が目に入り、また、話を聴いてみたいと学生から社会人まで幅広くご連絡頂くようになってきたことも相まって「確かにこの職種ってあまり表に出てこないかも」と感じました。

守秘義務に抵触しない範囲で概観します。また、下記の内容は同職種に共通する部分、私の立場や個人的考えに基づく個別の部分があることを念頭に内容を楽しんで頂けますと幸いです。

Analyst : 個人的な位置づけ

専門特化の時代です。多くの人がMBAや専門分野の大学院(Master, Doctor)まで修了してから入社します。プロジェクトマネジメント、ファイナンス、エンジニアリング、データサイエンス等々、其々のポジション名がそのまま専門性のラベルとなる中で、「アナリティクス」という極めて曖昧なラベルがつくAnalystには、その能力・専門性やその技術水準において劣って見られがちです。

しかし、私はBusiness Analystという現在の職種に強い意義と魅力を見出しています。一言でいうなら「遊軍」であり、全体最適に向けて利害関係者全体を方向づける何でも屋です。それぞれが専門特化して個別最適を担うと、全体最適は達成されないというのは会社に限らず全ての社会や組織に当てはまる話だと思います。

私が考えるAnalystとは、そうした齟齬を定量的・定性的データで解きほぐし、そしてあるべき方向に向かわせるための役割です。専門特化のご時世においても、こうした調整を担う役割が存続しているのは、こうしたニーズが残り続けるからだと考えています。

(なお、Analystの単価は非常に低いです。。。私以前Business Analyst(BA)とData Scientist(DS)の内定を頂いたとき、DSの給料はBAの2倍でした。。。格差社会。。。DS選んでおけばもっと豊かな生活ができたのに。。。)

Business Analystの主な仕事と他の役割へのステップアップ

おそらく一般的な話ですが、BAの主なスコープは(1)指標の作成、(2)レポーティング、(3)データを使った分析です。この3つを常に繰り返しながらビジネスをドライブする、つまり売上向上かコスト削減に向けた諸々に貢献します。

後述しますが、BAとしての職人芸は(1)にて発揮され、(2)はDBや・パイプライン構築管理といったデータエンジニアリングやExcel/ppt/BIツールによる可視化・資料化といった専門性、(3)は世に言うBusiness Analytics的な上流分析手法からData Science的な統計・機械学習といった専門性を深めて伸ばすことができます。私の所感ですが、(1)はまだ十分な体系化がされておらず、そしてここに最もvalueの発揮できるスペースがあると思っています。この辺は後ほど詳述します。

おそらくtech企業に属する一般的なBAやData Analyst(DA)は、主にPM(PgM: Program Manager、PdM:Product Manager、PjM:Project Manager)と協業して彼らの意思決定をデータ分析で支えるのが一般的な立ち回りと存じますが、私が知ってる限り、昨今のPMは大体みんなSQLもPythonもRも使えます笑 

また、昨今のAIやBIツールの発展は目覚ましく、データを繋ぐと一瞬で分析や示唆出ししてくれます。よって、PMの指示や依頼で動くAnalystはいずれ役割を失ってレイオフの対象になるか、一生PMの仕事の下請け先となって、大したvalueを発揮できずに奴隷化したり失敗の責任を押し付けられる立場になりがちです笑

では、BAとしてキャリアを磨くにはどんな選択肢があるのか、というと、大きく分けて(A)何らかの専門性を磨いて職種に移行するか、(B)組織の上流で仕事する かどちらかだと思います。(A)は、例えばBAは様々な職種にジョブチェンジできる余地があります。

(A)について、例えばPgM・PdMSales(営業)側に行く方もいれば、Tech領域の中でもデータベース、BIツールにキャッチアップしてBusiness Inteligence Enginner(BIE)Data Engineer(DE)に行く人、会計を学んでFinancial Analyst(FA)に行く人、機械学習を学んでMachine Learning Enginner(MLE)、統計や調査を学んでData Scientist(DS)Research Scientist(RS)に行く人など、私が知ってるだけでも非常に多種多様なキャリアを歩めます。まさにポケモンのイーブイみたいな位置づけ笑

Amazon Japanの職種紹介ページには実に多くの職種が紹介されています。

その中にビジネスアナリスト(データ分析)もありました。ちなみに私は新卒でコンサルに入社した後、「3年以上のデータ分析、またはシステム構築」も「SQLなどのリレーショナルデータベースを使ったデータ抽出」経験もないままこの職種で入社しました笑 ここに書いてあるのは、あくまで業務内容の一部であり、応募に必須要件ではないと思います。

上記の採用ページはおそらくRetail側を含む物流部門以外の方々が作った採用ページで、物流部門の職種紹介ページは分かれています(不便ですね。。。元々別の会社だったからかな?) 物流側の職種紹介の「データエンジニア/データアナリスト」ページには、「この職種の主なポジション名」として関連する職種の名前が挙げられています。

組織の上流で働くBusiness Analyst

一方、私は(B)組織の上流で仕事する の道、BAとしての専門特化の道を歩んでいます。イーブイのまま進化させずにレベルを上げていくと、お給料も専門性も育ちませんが、代わりに人間関係が一気に拡大して自分が関与する影響範囲が拡大し、ビジネス組織上層とのコミュニケーションが格段に増加し、『ビジネスをドライブするためのデータを使った説明責任及びネクストアクション提示』的なな役割の比重が増します。私はこの役割に強い魅力を感じており、現時点では、よほどのメリットがない限り他のジョブに変わりたくないなと思っています。つまり、BAとしてキャリアを育てると、より組織の上流に関わることができ、ビジネスをデータでリードする経験ができるようになります。

また、弊社含めGAFAMは曲がりなりにも世界の最先端を行く(はずの)会社です。最新技術に基づき常に最新のプロダクトやオペレーションが開発され、それを導入してテストして改善して、という流れが高速かつ同時並行で進みます。肌感ですが、私がコンサルとして日本の大企業相手にやってたときの5倍のスピードで、20個くらいのプロジェクトが常時連動しながら進行します。

それぞれのPMが自分の成果をアピールすべく野心的かつアグレッシブに動いており、立ち回りをミスると激ヅメされます笑 また、自分の分析結果の提示が有利に働く人たちもいれば、不利に働く人たちもいます。この辺、立振舞いはかなり緊張感を持って接します。

参画前~参画後1週間:組織理解 – 部署、チーム、メンバー、スコープ、中心人物

上記を踏まえ、私がUSの新ポジションに参画するにあたっての所作や過去の経験を振り返りながら、BAとしての仕事と私が思うvalueについて語ります。

まずは参画前。見るのは組織図。組織はビジネス目標を実現するための手段で、どう分けるか、どう権限と責任を与えるかは経営層にとって重要な問題です。同時に、誰が重要事項をドライブしているか、誰が重要な人間関係を握っているか、誰が重要な情報を持っているか、誰に訊けば教えてくれるかを探ります。

参画前に「業務内容の詳細を教えてくれ」とお願いしても、チームや上長含む全ての人が「参画後で良いじゃん」という反応を示します笑 私が逆の立場でも多分そう回答します。故に、参画前に得られる情報には限りがあるものの、キャッチアップ資料に加えてこういう組織情報を徹底的に洗うことで、参画後のキャッチアップを一気に加速させます。

同時に、そのビジネスで使われているプロダクトと進行しているプロジェクトを探ります。これは組織の財務体質を知るには非常に重要です。どんな財・サービスを生産・販売して売上を上げるか、どんなコストが生じるか、それぞれどこが大きな割合を示すかを他社事例なども参考に調べながら想像していきます。

この参画前の調査の時点で、私が確認した関係者の方々は複数の部門合わせて約300人。自分の判断で重要性に濃淡つけつつ、それらの人たちのカレンダーをいつでも見れるように登録し、そして関係してる方々のカレンダーを並べます。予定は非公開でも、複数のカレンダーの同じ時間枠に定期的にブロックされている枠があれば、きっとそこで定期的な会議を持っているはずで、そうすると各自のタッチポイントや動き方に予想がつきます。

上記をまとめておいて参画後に自己紹介のための1:1でも申し込み、予想してたことが正しかったかを検証しつつ修正し、組織チームの動き方を把握します。なお、この調査は私が日本にいるときに大体終わらせておきました。渡米後PCを受け取ったのは参画2日目。速攻で仕事を振られ、仕事内容も良く分からんまま手を動かしつつ、上記の検証のための1:1を設定しまくってました。参画から1か月後くらいまでは1日平均8人くらいと設定してたみたいです。

ここで、自分の所属するビジネスが関連し得る部署、チーム、メンバー、スコープとそれぞれが持つ指標、レポート、各指標の目標を把握します。

(余談1)関係者の数、関係部署の数

ご存じの通りAmazonは巨大組織です。また、Amazonに限らずGAFAM等のBig Techは様々な組織が連動して一つのサービスを提供しており、一つの変更を加えるにも多くの根回しや調整が必要だったりします。

例えば、2024年5月12日現在のAmazon Japanのトップページ。もうこのページだけで本当に様々なチームが関連してそうです。まずは一番上のバナーやその下のカテゴリーごとのセール・ポイント還元タイル。Amazonで行うセールを表示してますが、これらはAmazonに出品するvendor・sellerを管理するリテールビジネス・セラービジネスのチームが企画・運営してると思います。多分。

また、トップページの一番上は、たまに一企業のブランドや商品を紹介する広告のようになります。おそらくAmazon広告の広告枠として利用されているのかと。

Amazon広告のページを見ると、様々な広告出稿方法があるようですね。

Amazonの売上のポートフォリオを見ても、新興のAmazon広告が大きくなってきているように見えます。

こちらの記事でも紹介されているように、これまでGoogleとFacebookが支配的だった広告ビジネスシェアを少しずつ奪ってきてる構図のようです。

関係者・関係部署が多いという話に戻りますが、Tech視点でもバックエンド・フロントエンドの開発・保守のみならず各プロダクトを開発するSoftware Development Engineer(SDE)やその開発・運用・保守を支えるAWS側の各職種、そのAWSの開発や営業といった各職種もAWSの採用ページに紹介されています。

例えば出品者をサポートするリテールの一職種で入社したとして、これほど多くの部署やチームや職種が連動して動いているので、一つ施策を打つにしても各機能の細部を理解する必要があり、各部署やチームや職種からの理解や賛同を得つつ協業する必要があります。

参画後1週間~1か月:(2)レポーティング業務 への注力

話を戻します。組織上流BAとして働くには、まず最初に組織図への理解が非常に大事です。その次のステップとして、各部署・チームが使用している指標とデータの取得・加工方法を徹底的に調べます。定期的なmtgで使うppt、excel、pdf、BIツールといった様々なフォーマットのレポートから始まり、その取得方法、その取得や各チームが業務を行う上で取得するデータの取得・加工方法を細かく調べ上げます。もちろん調べながら、自分もこれらの業務依頼をこなしていきます。「xxへの報告にxxの指標を追加してほしい」「xxの新規立ち上げに向けてダッシュボードを作ってほしい」などなど。

この時点で、各業務の流れやデータをどう解釈しているかといった判断基準を確認する必要があります。加えて、多くの場合各チーム単位、またはチームの中でも使用するデータの元となるデータテーブル、スキーマ、DBやそのデータ取得・加工に使用するSQL、python等のコードがバラバラだったりします。

これらをマジで一つずつ細部までvalidateします。DB内の行の重複、データと実際の業務の処理の違いの発見などなど。本当に骨の折れる作業ですが、これをやらないと、そもそも同じデータを見てない、同じデータでも解釈が違う、解釈が同じでも取るべきアクションが異なるという阿鼻叫喚な地獄絵図が生まれるし、弊社のみならずそういう事態は割と日常茶飯事だろうと想像してます。

この業務を遂行する上では、DBやBIツール、データ取得・加工に使われるプロダクトへの理解といった専門性が必要になるほか、各利害関係者がそれらの数字をどう解釈しているかという明文化されていない暗黙知・暗黙ルールまでを調べ上げる必要があります。この辺は本人たちに訊くしかないし、時に本人たちが言語化せず無意識にやっていることもあるため、1:1や彼らの実施しているmtgに出席して状況を把握する必要があります。非常に時間がかかります。

この作業を行ううちに、チーム単位で異なる目線が私の頭の中でくっきりと描けるようになります。そして私はこの時点で、各チームが重視する指標と各チーム目線でのその分解観点をウォーターフォール図で整理していきます。このウォーターフォール図での理解を何に使うか、後ほど説明します。

参画後1か月~1か月半:(3)分析業務 の比重拡大

上記の作業を経て、ようやく自分が属するビジネスの売上・コスト構造とそれらが生まれる流れを徐々に理解できるようになります。この理解が生まれると、次は改善余地を見つける作業に移ります。所謂「分析」です。

この段階では、財務的な指標をFinance teamと確認しつつ、これまで見てきた組織図の部署割とそれぞれの部署・チームの業務、彼らが見ている指標を考慮しながら改善余地を見つけます。社内外の市場動向や定性的情報も拾い、他社事例としてこんな手法もある、こういう新規性のチャンスがあるという実現可能なアクションに落とし込むことを念頭に置きながら、データでロジックで武装してきます。

なお、ここで行うデータ分析はそこまで高度なデータサイエンスを使いません。私は一応DSポジションで内定頂ける程度には同領域に理解がありますが、特に私がレポートする上流の経営陣やleadershipにその理解はなく、その理解度は「2つを比べるからA/B test って言うんでしょ?」的なものだったしります笑 彼らに理解して頂きネクストアクションに合意頂くためには、彼らが直感的に分かりやすい原因・解決策やそれらに基づく四則演算に落とし込んであげる必要があります。

従って、私の分析はざっくりしすぎてて厳密さを追求しきれておらず、時に一部のDSやPMから評判が悪かったりします。彼らの分析結果と整合しないと言われることもたまにありますが、私は「全員の個別最適が全体の全体最適になるわけではない」という合成の誤謬論者なので、もちろん彼らとの不整合の原因を明らかにする努力はしますが、それが明らかにならないケースもあります。スコープの広さが違うと、どうしてもこういうケースは生じます。

そこで退くか進むかは毎回難しい判断ですが、結果的にDS/PMが違っていた・違うと判断されることもあります。そして何より、ビジネスはスピード勝負なので、時として細部の分析結果が出る前に先に進まなければいけないこともあります。この辺は大変心苦しいものの、ある程度割り切ってます。

参画後1か月半~2か月:(1)指標の作成 を通じた関係者の利害調整

上記を踏まえて分析と示唆、そしてネクストアクションを提示します。私が提示する先は組織の上流、つまり成長を見越した資本・リソースの投資・投資先・投資の優先度を決める方々です。彼らの判断によっては部署がなくなったり走っていたプロジェクトが止まるといった大きな方針転換が起こりえるので、私も細心の注意を払いながら報告・説明しつつアクションを促します。

先に述べたように、BAの主なスコープは(1)指標の作成、(2)レポーティング、(3)データを使った分析で、(1)は未だ体系化されておらず職人芸だと思っています。ここでの利害を調整するために、BAの力が発揮されると思います。

私は上記の分析結果とネクストアクションを報告する資料の中に、「なぜ、私がこの点を見つけたか」を書くようにしています。それは別の言い方をすれば「なぜ、この問題が生じたか?」「なぜ、私が指摘する前に他の誰かが気づけなかったか、気づいても解決できなかったか?」「なぜ、ブロッカーやチャレンジ、障害が存在するのか?」という問いであり、その原因は組織割りやそのスコープ、書く部署やチームが日々担う通常業務に潜んでいます。

従って、細心の注意を払っても、そして意図せずとも、結果として「みんなが正しいと思っていたこと」の不備を指摘し、誰かに利する/誰かを害することになります。ここは毎回本当に立ち振る舞いが難しく、一歩間違えれば私の責任問題にもなります。

とはいえ、私はこうした指摘を行った上で次のアクションに向けて利害関係者の認識を合わせネクストアクションにリードする必要があります。そこで、先に挙げたウォーターフォール図での理解を使って説明しつつ、新しい指標を提案してきます。

組織全体に共通するある重要指標があるとき、この指標をどのように解釈するかは各チームとそのスコープで大きく異なります。NA, EUといったリージョンや地域単位で管理するチーム、各業務のプロセスごとに管理するチーム、プロダクトや製品ごとに管理するチーム、勘定科目ごとに管理するチーム。それぞれの要素分解が全てMECEになっていてクロス集計すればキレイに分解できる、ということは絶対になく、そしてよくあることが、あるチームが注力して改善した分解要素の1つが、他チームの分解要素の1つと負の相関を持ち、個々のチームの個別最適が利害を生む状況です。

上記に加えて、私は組織外部向けの話もする必要があるため、市場環境の成約や市場に対する会社の立ち位置を考慮するためにLegalPRといった間接部門との事前調整・合意が必要になることも少なくありません。

上記の諸々を踏まえて、ネクストアクションを提案し、その状況を管理するために新しい指標を作って提案します。なぜこの提案が職人芸かというと、組織上層から現場までの利害調整のために、既存の指標やその解釈、現在の組織割りと各組織のオペレーションから、だれが次のネクストアクションを担い、だれがリードし、誰が実現するかを事前に予想し、新指標が彼らの数年先までのビジョンに整合していることを説得するための必要な根回しを行った上で提案する必要があるからです。

これは各会社や各組織での個別具体的な状況を鑑みる必要があり、担える部署や人を見極める必要があるため理論化が難しく、教科書に書かれたビジネスケース問題通りにはなりません。業界・業種でも大きく異なるため体系化が難しく、故に職人芸になってしまうのでしょう。ましてAIがこの職人芸を代替できるとは一ミリも感じません笑

当然ながら、変更を伴う際は将来的な段取りとタイムラインもセットで提案する必要があります。以前私は3か月先までの会議の議事録を事前に作成してストックしておくという内容の記事を書きましたが、1年先や2年先までを見越して荒く作ったマスタースケジュールを分解していき、週次や月次の定例会議くらいの周期に落としこみ、そこに出席する人を決めた時点で、話すべき話題、悩むべきポイント、決めなきゃいけないこと、ネクストアクションが確定します。未来にこうすべきという意思を以て会議を管理すると余計なことを考えずに済むし、リスク検知や紆余曲折で生じる課題や変更に時間を割くことができます。

(余談2)組織図を見て嗅ぎ分ける『商人の嗅覚』

『商人の嗅覚』という言葉を、私は非常に気に入っています。直近だとマンガ「進撃の巨人」に登場するリーブス商会のフレーゲル・リーブスが使ってるのを見ました。ビジネスの良し悪しを嗅覚を使って識別するというのは、割と一般的な概念のようです。

私は3歳から、祖母に天然石の売買を教わりました。値付け、目利き、真贋判定等々。3歳にして3×3の木箱に石を入れていき、掛け算を覚えたりしてました。マーケットに行って買い付けたり、祖母が顧客に販売するところを隣で見てたり。

この技能は大学生になって役立ちました。2011年の震災発生後、計2年間休学した私は浪人時代も相まって相当な年齢になっており、もはや一般的な新卒就活ができる年齢ではなくなってました。こうした状況に対して明確なアクションをとっておらず、心配して色々声をかけてくれた親の支援も邪険に扱っていた結果、両親との関係は最悪になり勘当に至りました

ということで、通学しながら自分で学費を払いました。幸いにして、私はこの時、石を売買する能力を持っていたため、このお金でなんとか生活しました。この時に確定申告も覚えました。

上記の経験から、私は一般的な人よりビジネスの嗅覚が発達しています。亡き母曰く、小学生くらいの頃から、飲食店に連れて行くとお店の店頭の求人を見てから店内の様子を見て人件費を計算したり、出てきた料理の原価を予測したり、業者用の業務用調理具や設備のカタログを見て暗記してお店の収益状況を考える子だったらしいです。本当にクソガキだったと思います

話を本題に戻します。私が所属する会社に限らず全ての組織において、組織図を作って役割と人員を配置した時点で勝負が決まっています。組織図とは非常に残酷で、売上規模や利益率・成長率を目標値に置く場合において、その達成に向けた伸びしろや難易度が決まるため、どこが勝つか・負けるかは組織を決めた時点で決まっているし、その上層部がこの状況をいかに理解しているかによって、私の初期仮説の実現度合いが決まります。上記の理由より、最初に行うのは組織図の理解です。

思い返せば去年の今頃、私はhiring freeze下での2度目のorg updateにて職を失い、社内外の次の職を求めて彷徨っていました。org updateでの失職とは、その組織でどんなに頑張ったところで、上層部からは組織ごといらないと判断されるわけで、勿論その組織の運営に課題があったこともあると思いますが、組織に与えた役割が当初より小さい、ビジネス変化の流れにそぐわない、他組織にやらせた方が合理的といった理由も少なくなく、つまり、生き抜くためには組織を作る人間の立場で組織の役割と成長余地を見定めなければなりません。

これを見定める力がなかったから、私は2度のorg updateで失業に襲われました。自分のキャリアに責任を持つとは、自分が目指すビジョンを実現し得る安定的基盤を得ることであり、それを実現する組織を選ぶ嗅覚を持つことだと思います。

日々行うトレーニング

ということで長くなりましたが、これが私の経験を踏まえたBusiness Analystとしての仕事内容です。冒頭述べたように、おそらく会社や組織によって役割も責任範囲も大きく違いますが、(1)指標の作成、(2)レポーティング、(3)データを使った分析は共通しているでしょう。

先日友人から「データ人材はこれを30歳までに身に着けておくと良いらしい」と2枚の画像が送られてきました。出典が分かりませんが、個人的には結構納得感あります。確かにこの辺は全て分かった上で業務に取り組む必要はあるかと思います。

これに加えて、一般社団法人データサイエンティスト協会のスキルチェックシートも好きです。これ作るのにいろんな議論があったと思うし、各現場で働く方々からの評価は色々あると思いますが、こうやって一覧として洗い出して頂くことで、自分の足りない分野を自覚できて勉強できます。

なお、データサイエンティスト界隈の急速な拡大や未だ沈下しきっていないAI・DXブームの中で、データサイエンスやエンジニアリング領域でのスキルアップは未だ根強い人気を誇りますが、上記の私の動き方をご覧頂くとわかる通り、少なくとも私はそれらを部分的に使いつつ大部分を人や組織の調整とその準備に割いていますデータドリブンでビジネスを動かすとは、きっとそういう泥臭い仕事なんだと思います。

その上で、BAとして特化するならば、下記も是非参考にしてください。私は社会人になるとき、漠然と会社組織の経営や産業・社会といった大きな領域にインパクトを与える仕事をしたい、「歴史に対する自分の役割を見出したい」という非常に大きな夢を持ってコンサル業界を選びました。そして今、その夢に近しい領域で仕事できるようになってきたと感じています。

それを実現する上で、毎日必ず時間をとって続けてきた2つのトレーニングがあります。それは(a)フェルミ推定・ビジネスケース問題(b)市場環境と業務オペレーション調査 です。

(a)は、よくコンサル就職を希望する方々が面接対策でやってるアレです。ただし、本に記載された問題を解くだけではなく、あらゆる事象をシンプルな四則演算で表すこと、そして、ケースにおけるビジネスシーンの解像度をとにかく細かくすることを意識して頂きたいです。そのために(b)で実務に活用する解像度を上げます。「電柱の本数の推定」とか「戦略案件ケース問題」とかやってるうちは抽象度が高すぎて実務への応用が難しいです。逆に、ある業界のある業務のこのオペレーション、「xx社はxx使ってxxを改善している」といったドメイン知識をニュース記事や有報などから片っ端から集め、それを(a)で解きます。私はこれに毎日必ず時間を割いています。

「どれからやれば良いですか?」と訊かれそうですが、目に入る全てです。全てやってください。量をやって初めて品質の良し悪しを語れます。人の言う品質を理解できるようになるまでひたすら量を解き続けましょう。

とにかく解像度を上げ、日常に潜む細かいシーンの課題をフェルミ推定とケース問題の知識で解きます。

現代人が1日に受け取る情報量は江戸時代の1年分にも相当するとか、ここ10年で個人の受け取る情報量は530倍になったとか、とにかく現代は情報量が多いといわれる。脳内で情報処理をする量が年々増えているのだから、昔の「5年」「10年」とは感覚が違って当然なのかもしれない。

 検索してみたところ、2019年に「『十年一昔』は、今の感覚では何年?」(シニアガイド/2019年11月6日)という記事があった。

 こちらでは日本リサーチセンターが18〜79歳の男女1200人を対象にしたインターネット調査の結果があり、これによれば「『十年一昔』ということわざは、今だと『何年くらい』だと感じますか」という質問に、もっとも多かった回答は「5年」(32.6%)、ついで「3年」(18.8%)、「10年」(15.0%)だったという。

ダイアモンドオンライン – 「Z世代の一昔は5~6年前」のニュースに疑問、時間感覚はそう単純じゃない

最近だと、 昔と今で情報消費量が大きく異なるなら、昔の人たちの勉強量って大したことなかったんじゃね?という疑問から、「枕の存在を忘れるほど勉強した福沢諭吉」の勉強量を推定し、現在の小学5年生のそれと比較して、リアル「あなたは小学5年生よりかしこいの?」を検証しようと試みたことがあります笑 勉強量をインプットした情報量として四則演算で定量化した場合、それは大差ないor今の方が勉強してることになりがちなのですが、であれば福沢諭吉が歴史に名を遺すほどの実績を上げたのは勉強量ではなくそれに基づくxxxであり、そのxxxを定量化・指標化すれば今の子供たちも歴史で活躍できるじゃん!という議論をしました。鳥貴族で笑 

渡米後はそもそも節約のためお酒を飲みに行く機会もなくなりましたが、こうした議論はChatCPT等の生成AIが良い壁打ち相手になってくれます。

渡米から2カ月 – 徳川家康の教訓でマンネリ化を戒める

最後に。アメリカに来て2カ月が経ち、渡米前から心に決めた生活習慣は維持できているものの、やはり自覚できていない部分も含めて慣れたことで、緊張感や吸収力が失われていることを感じます。例えば、入社初日に喚起した無料のコーヒー、今では美味しく感じません笑 弊社のStill Day 1の精神は、私の中でこんなにも脆く失われてしまうとは。。。

ということで最近、徳川家康の逸話を真似て自分を戒めることを考えました。初心を忘れない装置を作ります。正式名『徳川家康三方ヶ原戦役画像(とくがわいえやすみかたがはらせんえきがぞう)』、通称『しかみ像』。自分の敗戦時の様を絵画に残し、常に見える場所に置いて身を引き締めたそうです。

本図は18世紀の終り頃に紀州徳川家から尾張徳川家に伝来し、当時は「家康の肖像画」とのみ伝えられていたが、明治期以降の尾張徳川家では「長篠戦役図」とされ、1910年(明治43年)に同家が開催した展覧会に出品されると、その特異な容貌・姿態から珍重されると同時に、「敗戦時の家康の肖像を、同家初代当主・徳川義直が、当時の窮状を忘れないように描かせた」との口伝が付され、本図が尾張徳川家から財団法人・尾張徳川黎明会が運営する徳川美術館に移された後、1936年(昭和11年)に開催された展覧会に出品された際に、美術館側により「三方ヶ原の戦い」での敗戦を「狩野探幽に描かせた」図、更に1972年(昭和47年)頃には「家康自身が描かせ」、「慢心の自戒として生涯座右を離さなかった」との情報が付与された。

この口伝は、「三方ヶ原の戦いでの敗戦直後の姿」という説明が本図の異様な容貌・姿態を理解しやすくし、また「家康が、自身の慢心を戒めるために自身の姿を描かせ、自戒のために座右に置いた」という逸話が家康の人間性をよく表しているとされ、「失敗を真摯に反省することが次の成功につながる」という人生譚が現代の日本人の共感を呼んで歴史書や経済誌などでも取り上げられたことから、広く周知されることになったとみられている。

(中略)

徳川美術館2023年開催の『夏季特別展 徳川家康―天下人への歩み― 』展Webサイトでも本図を『徳川家康画像(三方ヶ原戦役画像)』と紹介しながらも、「三方ヶ原で敗れた家康が、その敗戦を肝に銘ずるため、敗走時の姿を描かせたと伝えられていますが、この伝承には史料的な根拠がありません。」と記している。

wikipedia – 徳川家康三方ヶ原戦役画像

この逸話、根拠ないらしいんですが、私が自己催眠かける装置なので根拠とかは良いです笑 自分がUSに来たばかりの新鮮な気持ちをいつまでも忘れないために、毎日の生活の導線に渡米当時を想起させるアイテムを配置することにしました。

これは、私が渡米初日に借りたレンタカーの車のナンバーやレンタルにおけるルールを記載したパンフレット。これを見るたびに、タコマ国際空港のpasport controlで英語喋れず挙動不審過ぎて細かく取り調べられたことや、普段運転しないのに初日から右側通行だし周囲の車のスピード早いし死にそうで泣きながら運転した渡米当初の記憶が蘇ります笑 

このパンフレットを必ず会社のノートPCに挟むことにしました。仕事を始めるときにPCを開く度にこれが目に入り、当時の記憶が蘇り気持ちが引き締まります。PCとレンタカーのパンフを一緒に持ち歩いてる人がいたら、それが私なので是非声をかけてください笑 そして、そんな過去を肯定的に懐かしむことができるように、良い未来を作るべく引き続き精進致します。

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