大受 東大 世界史 1984 1次大戦・2次大戦の共通点

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第一次世界大戦と第二次世界大戦とは、20世紀の戦争として、それまでの歴史に見られなかったような特徴を備えている。二つの戦争を比較し、これらに共通する新しい性格と結果とを600字以内に論ぜよ。なお、解答文では下記の語句を少なくとも一回は使用し、最初に用いたときには下線をほどこせ。

工業力 国民生活 アジア 残虐兵器 植民地 革命 国際平和機構 飛行機 アメリカ 国家統制

この問題も、以前ゆげ先生と一緒に世界史の問題を解いていた頃、本問が出題されたのは冷戦中ながら非常に示唆に富んだ問題だと感心しました。私の作った答案をもとに考えていきます。

両大戦に共通する新しい性格は、総力戦という戦闘形態と参加国・地域の規模である。工業力を基盤とした経済力を高めた各列強は、それぞれの生産能力と物的・人的資源を極限まで戦争に使用した。また、ナショナリズムに基づく国民国家の形成は、国民生活を犠牲にする総力戦を正当化するための国家統制を実現し、毒ガスや原子爆弾等の投入された敵戦力を効率的に処理するための残虐兵器や、飛行機やレーダー等の情報・物流における優位性を確保するための兵器・技術開発への投資が、これまでの戦争とは比較にならない規模で行われた。更に、列強の極限までの資源消費の影響は植民地まで及び、欧州の民族主義の衝突が、結果として世界中を巻き込む規模の戦争となった。両大戦に共通する結果は、帝国の解体・社会主義国の誕生とヨーロッパの没落・国際機関での世界統治の方向性である。上記の総力戦の負担に耐えられない帝国は解体された。また、総力戦やその影響による窮乏を経験した市民層が革命や反乱の主体となり、ソ連やアジアの植民地のように、社会主義国として資本主義体制やその支配にアンチテーゼを唱える新体制を築く国も現れた。更に、新たな国際秩序を築く手法として国際平和機構の創設が提案され、欧州列強の没落の中で、連盟創設の提唱・連合の常任理事国を務めるアメリカと、連盟への途中参加、連合の常任理事国を務めるソ連の世界規模での対立構図の形成を助長した。595

今現在、私達は後世の歴史家から「第3次世界大戦」とくくられる時代を生きているかもしれません。ロシア・ウクライナ戦争にはアメリカ・アジア・ヨーロッパから多くの国が経済的・政治的・軍事的に参加しています。1次・2次大戦と私達が生きる今を比較してみます。

①まず、1次・2次大戦は総力戦であり、世界規模でした。工業力の伸びを背景に生産力が高まり、国民主義・民族主義により統制された国民が、自分の生活を苦しめてまで国家の勝利を望みました。②また、世界中に植民地を持つ列強が植民地の人材や資源を消費する形で世界を巻き込みました。③更に、運搬技術と軍事技術の発達により、大量に参戦した人民を大量に破壊する兵器ができました。

今現在、①’私達の国家に対する忠誠心は当時ほど高くないでしょう。日本のみならず世界中で。②’また、植民地は独立し、一応各々の意志で世界大戦への参加・不参加を決定できる建付けです。③’通信技術とミサイル制御・ドローンにより、そもそも人が大量に参加する必要がなくなりました。

①②③において、私たちは大戦を行う前提が変わったにも関わらず、ロシア・ウクライナ戦争に加担する形で世界大戦の影を引きずっており、為政者たちはバランス感覚の難しい国際関係の中でプロレスのような主張を行っているように感じています。

仮にこれがプロレスで、何かから目を背けたり、何かの制度を存続させるための延命措置なら。例えば先進国各国が国内に抱える債務残高や少子化、貧困層拡大、移民流入。あるいは、経済界からの要請による現経済体制の維持なのかもしれません。

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