「フロー状態」との出会い

プロフィール

フロー状態とは、私の理解で端的に言うと、「超集中しているのに超リラックスしてる状態」です。

概念との出会い

私がこの概念に出会ったのは大学1年生の時。CD(コンパクトディスク)や犬型ロボットAIBOの生みの親でPS3の販売戦略にも言及なさっていた、元Sony常務の天外伺朗氏の著書『マネジメント革命』を読んだ時のことでした。

近年の天外氏の思想や主張、行動には様々な議論があることは存じておりますが、2浪してようやく大学生活が始まると思っていたら未曾有の震災に見舞われた私にとって、この本は非常に刺激的かつ衝撃的でした。

本書は組織論なので、本書に対する私見は別の機会に書くとして、本書で語られている、無我夢中で開発に取り組むソニーの方々は、集団でフロー状態を実現していたと理解しました。

忙しい人はこちらの記事をどうぞ。

創業期にソニーを躍進させた「フロー経営」とは? 天外伺朗氏がイノベーションを生み出す心のあり方と場づくりを解く

フロー状態の提唱者によると、下記のような定義もあるとのこと。

ジェーン・ナカムラとチクセントミハイは、フロー体験の構成要素を6つ挙げている[2]

  1. 専念と集中、注意力の限定された分野への高度な集中。(活動に従事する人が、それに深く集中し探求する機会を持つ)
  2. 自己認識感覚の低下
  3. 活動と意識の融合
  4. 状況や活動を自分で制御している感覚。
  5. 時間感覚のゆがみ – 時間への我々の主体的な経験の変更
  6. 活動に本質的な価値がある、だから活動が苦にならない。(報酬系

さらに心理学作家のケンドラチェリーは、チクセントミハイがフロー経験の一部として挙げている3つの構成要素について言及している[3]

  1. 直接的で即座のフィードバック[3](活動の過程における成功と失敗が明確で、行動が必要に応じて調節される)
  2. 成功する可能性があると信じる(明確な目的, 予想と法則が認識できる)
  3. 経験に夢中になり、他のニーズが無視できるようになる

フローを経験するためにこれら要素のすべてが必要というわけではない。

フロー(心理学) – Wikipedia

自身の体験

私はこれまでの人生で3度、自身が日常的にこの状態にあった時期を自覚しています。

最初は、幼少期よりバイオリンで音階を練習している時間。一日500回のノルマをこなす必要があり、どんなに早くても3時間、長いと5時間かかります。3時間ひたすらドレミファソラシドを繰り返すので、慣れるまでは発狂しそうになるわけですが、弾いているうちに指の感覚がなくなり、両手は勝手に動き、頭はぼーっとしているものの弾いた回数をカウントしつつ、外した音が耳に入ると瞬時に理解して次の回までに指の感覚を微修正します。

私の先生の指導では、音階(ドレミファソラシド)を5回繰り返す度に分三和音(ドミソドソミド)を挟むのですが、音階に比べて分三和音は難易度が高く、一日の練習量は音階に比べて5分の1なので、正確に弾くためには相応の集中力と修正力が必要でした。

体力バカだったこともあり、私は長時間の練習でもある程度集中力を保つことができましたが、今振り返ると、幼稚園などバイオリン以外の時間は自分の好きなことに好きなだけ没頭できていた分、リラックスして熱中する習慣はバイオリンの時間だけではなく日常生活において常態化してたのかもしれません。

もっとも、そんな私の幼少期は極めて自分勝手で親の言うことを聞かず自分の好奇心の赴くままにひたすら熱中してたので、子育ては本当に大変だったと思います。

2度目は、高校受験。偏差値70台の都内私立高校を狙う割に、中3最後の模試で偏差値50台だった私は、予備校の先生方はじめ多くの人に期待されない状態になりつつも、もはや自分のことしか考えられないほどの勉強マシーンにになってました。

中3の8月に部活を引退した後、朝起きてから夜寝るまでの全ての動線が毎日ほぼ固定化し、食べるものや身支度は受験が終わるまでほぼ固定していました。固定していたというより、脳内で検討していなかったように感じます。頭は常にリラックスしてるのですが、歯を磨くときも、自転車をこいでいるときも、友達と会話しているときも、常に頭の中で問題を解いていました。

この時期、私はテキストの問題・解答・解説を丸暗記することが得意になっていきます。ある高校のある過去問集を1週間で1周し、1か月後に丸暗記するような感覚で解いてました。

それでも直前まで偏差値が上がらなかったのは、量の蓄積に数か月を要したことと、問いに対する適切なアウトプットを頭の中から引き出す力を身に着けるのに数か月を要したこと。

これは幼児期の言語発達に似ていると感じます。1歳に前後して、子供は喃語を話し始め、次第に大人が使う言葉を発するようになりますが、パパだけではなくおもちゃや生活シーンにおいても「パパ」を連発します。これは、「パパ」を知っていても、「パパ」の適用範囲が分からないから起こると考えられており、両親はじめ周囲の人のリアクションを学びながら、2歳になるころに適用範囲における大人の常識を理解し、正確な適用範囲を身に着けます。この頃には200語ほどを覚えており、2歳ごろに適切な200語の適切な使い方を身に着けるため、育てている親からすると、急に言語爆発が起きたように感じるそうです。

参考までに、幼児期の言語発達に関する研究は、こちらの本が薄くて楽しめると思います。

脳の発達に絡めてもうちょっと色々な研究を知りたい方はこちら。

そして3度目は、大学に入った後。2浪の末に入学し、同時に震災を経験し、自分が世界を救うしかないくらいに勘違いを拗らせていた私は、大学で文理問わず様々な分野の学問にハマり、とにかく本を読んでA4一枚にまとめるようになります。一番集中していた時は、大学の勉強とは別に1日に3冊読んでまとめると決め、日々A4のルーズリーフ表裏に本の内容をまとめる訓練を続けました。

大学の卒業式が終わった後、図書館の貸出端末を確認すると、私は在学中に3008冊借りてました。支払った延滞金の総額は多分10万円くらいだったと思います笑

情報をまとめる力、幅広い知識のほかに、大学受験までに培った日常でのフロー状態に基づく勉強習慣を維持できたと思います。

社会人になると、異性やら飲み会やらの話題が増え、ストイックに勉強することを卑下する風潮があるように感じましたが、この習慣が続いたことで私は他者に比べてキャッチアップ力やスピードにおいて大きく差別化できる力、とりわけ好奇心を維持できたと考えます。

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