世界を私物化できる階級への迎合 – 渡米28か月の雑記

プロフィール

Amazon USで働き始めて28か月。第3子の誕生やH-1B否認など慌ただしいイベントを経験しつつ、現在行われている社会保障国民会議や一連の国内政策への「懸念」から、私の将来の展望について書きます。

第三子の誕生

Bellevueにて3人目の娘が誕生しました。日本で生まれた第1子、第2子ともにコロナ禍の影響で立ち合いできず、念願だった出産への立ち合いが今回初めて実現しました。へその緒も私が切りました。いやあ本当に、、、感謝と感動。妻のみならず世界中の女性に感謝したい、出産は本当に命懸け。

アメリカ式・24時間で病院を追い出される体験。産後18時間のヘルスチェックで赤ちゃん健康とのことで、「帰っていいよ(威圧)」でした笑 産まれてから24時間も経ってない赤ちゃんを車のチャイルドシートに固定するのは恐怖そのものでした。。。安全上きつく締めなきゃだけど、これ骨とか折れないの。。。?アメリカ人、みんなこれをやってるんか?そりゃ精神的にも肉体的にも強くなるわな。。。

上の子供2人の面倒見つつ、寝ると起きない妻に代わって2時間おきに起きる赤ちゃんの面倒を見る日々です笑 育休とってなかったら死んでた。。。

子供たちの成長

長女は4歳、次女は2歳半。特に長女は話す言葉や内容も増え、こちらの「冗談」が通じるようになってきました。冗談が通じるということは、「本来こうあるべき」という共通理解が共有できている状態で、「パパはふざけて本当とは違うことを言っている」という相手の立場を理解できるコミュ力が身についてきたと考えています。

妻:お腹いっぱい食べ過ぎちゃった。でもデザートは食べる

私:長女ちゃん、ママはね、胃袋が2つあるんだよ。ご飯用とデザート用。牛さんは4つだけど、ママは2つ。

長女:ええwwwwなんでママだけ2つあるの?www胃袋は1つでしょwww

ここで、すかさず草食動物の歯形と食物繊維の消化しにくさ、反芻(はんすう)の機能を教える私。3女の出産の話題にも絡めて、受精卵の卵割・発達における内胚葉由来の消化器官の分化まで教えてみた。いつも通りキョトンとする長女、黙々と食べる妻、楽しそうにケラケラ笑っている次女。

基本的には日本語のみで英語は殆ど読み書きできませんが、私が重視している言語面・社会性面における教育の当面の目標は「媒介」、つまり孤立を防ぎつつ他者に働きかけて方向付ける力の獲得。

前回記事で「節分や恵方巻をネタに方角や鬼についての歴史を教えている」と触れたように、日本人・日本文化をちゃんと教えています。この国で生きていく以上、「自分はxx人」というアイデンティティは極めて重要で、その基準から他者・多文化を相対化して共通点・相違点を理解することが、誰も孤立させずに率いる媒介的リーダーシップには不可欠の能力だと信じています。

子供たちの自認は、日本人・アメリカ人・あるいは他の人種・民族でも全然構いませんが、私自身について考えると、私は日本に郷愁を感じるし今更このアイデンティティを放棄するにも難しいと感じます。

一方で、「自分が信じる『正解』を更新できなくなったら『老害』」という言論を私は非常に正しいと思っているため、上記の考え方を絶対視せず、常に変化の中で柔軟に考えを変える余裕と覚悟を持って生きます。

長女の将来の夢:産婦人科医

第3子が生まれる数カ月前から、長女は「大きくなったら産婦人科医になりたい」と言うようになりました。当初は「ケーキ屋さんになりたい、白馬の王子様と結婚したい」的なアレかと思っていましたが、どうやら結構本気らしく、聴診器のおもちゃでお医者さんごっこしたり、医師だった私の父から貰ってきた医学書を見せると嬉々として毎日読んでみたり。

第3子の誕生も相まって産婦人科医になりたい意志は日に日に強まっており、この子はちょっと本気で将来の自分の生き方を考えているのかもしれないと思ったり。アメリカで生きていくなら、自分の領域を早期に決めて飛び級等で早めに社会で勝負させるのも良いのではないかと思ったり。

ちなみに私は4歳の頃、将来なりたい職業なんて何も思い浮かばずずっと泥ダンゴ作ってました笑 当時テレビチャンピオンで「地球玉」というピッカピカの泥ダンゴの番組やってて必死に真似したなあ。。。笑

H-1Bビザ否認

だいぶ計画が狂いました。H-1B取得によってその後とれる選択肢が広がることを意識していたので、否認となり引き続きL-1B(米国本社への招聘ビザ、退職時点で日本に強制送還)での生活は不自由と不安で割とストレスフルです。

何より弊社、AIという大義名分のもとにすーぐレイオフしちゃう系テック企業なので笑、グリーンカード取得までは結構煮え切らない日々が続きます。仕方ない。

なお、H-1B否認理由は、私が働いている職務上のポジション(Business Analyst)と私の学歴(商学部・学部卒)のミスマッチ。私の経歴において、H-1Bにて求められる「専門性」を有していないという判定だったわけですが、色々な話を聞くに、私のケースを担当した弁護士や申請を審査した行政側の担当者によってこれらの認否は相当変わるらしく。

出典:JETRO 米連邦地裁、トランプ政権のH-1Bビザ手数料10万ドルを無効と判断

トランプさんが言い出したH-1B手数料10万ドルも違法との見方が出ており、ひとまず次回の抽選にも応募してみたいと思います。

216億円Fireへの道

目標期日まで残り4年ちょっと。前回記事から今日までに一つ大きなマイルストーンに到達しました。ようやくここまで来た。本当に見える景色が変わりました。

とは言え現時点で達成を確信するほどのものではなく、常に全損のリスクを抱えています。この目標に最優先にコミットして全ての生活や判断を設計することが大事、魂のコミットメント。

肉体改造

30歳を過ぎて初めて、ちゃんと自分の体に向き合うことになりました。きっかけは子供たちの保育園の運動会の保護者リレー。私も全力疾走しました。

その様子を妻に録画してもらい、後日見たら心底驚きました。自分としては部活でサッカーやってた時代の意識そのままに体を動かして全力疾走したものの、動画を見るとフォームがかなり崩れて全然スピードが出ていません。今50メートル走やったら5秒台どころか6秒台も怪しい気がする。。。

部活を引退して以来、本格的に体を動かすチャンスに乏しい日々を過ごして幾星霜、自分の運動能力の低下に愕然としつつ、良い機会なので肉体改造に励むことにしました。

私の体重は部活引退直後で68キロ、おそらく人生で一番筋肉量が多かった時期です。それが渡米前は75キロ、筋肉が落ちつつ贅肉がたっぷり付いた形です。その後妻子を日本に残して単身日本に渡米、1年は馬車馬のように狂ったように働いたので体重は60キロを切る程度まで落ちたものの、その後妻子との生活でリバウンドし、現在は80キロに到達するほど太りました笑

なぜ太ったかを分析する中で原因を「食習慣」と「姿勢」に大別。姿勢については、整形外科医や整体師のyoutube動画などをみながら自身の重心が左に寄っていることやデスクワークによる股関節の硬化に主要な原因を見出しました。

出典:Facebookリール動画 かずにい【走りのお兄さん】足が速くなる最強ドリル

上述の保育園での走る動画は、自分の意識に比べて極めて小刻みに足を踏んでおり、太くなった太ももや腹回りが重くてこうなったと思っていたのですがどうやらそれは違っていて、股関節を大きく使いつつ地面を踏み込む力が衰え、ドスドス・チョコチョコ走りになっていたことが主要因。思い返せば部活引退後、確かにジムでランニングマシーンやクロストレーナーを使って「走る」ことはあっても、実際に地面を脚の指で掴んで蹴って前に進む運動をする機会はめっきり減った。こうして股関節が固くなるのかと。

ひとまず部活時代にやっていた筋トレ・柔軟体操のメニューを毎日始めましたが、量を増やしてもあまり効果を実感できず、原因を探る過程で姿勢・動作と筋肉・骨の連動という考え方にたどり着きました。

出典:Facebookリール動画 木村翔太 アーチができると足首は細くなる

自分の歩き方や座った時の姿勢から足首・股関節の柔軟性に問題があると認識し、それらが原因で贅肉が付きやすい体形になっていることを理解。

出典:Facebookリール動画 パーソナルジムenbody

腸腰筋や大殿筋の収縮・伸張と動作の関係を理解しつつ、その動かし方も学びました。単に伸ばすだけのストレッチではだめなのね。

出典:Facebookリール動画 ホンダ HY ヨウゾウ

足の小指を動かすことなんて普段全く意識してこなかったけど、足の外側に重心がかかることで立方骨が下がり中足骨の感覚が広がって小指が動かず、股関節から下の脚全体の動作の重心が外側に寄って姿勢制御が乱れることも理解。

サッカーやってた頃は、とにかく速く・フィジカル強くプレイするためにがむしゃらにトレーニングを重ねてきたけど、自分の体の動作が骨・筋肉とどう関係してきたかを考えることで、過去の手法のデメリットを理解しつつ、今現在の課題を一つずつ解きほぐす感覚。

身体を自由に・強く動かすことができた過去の栄光の記憶が多々残る中で、30歳にして初めて当時の記憶と現在のギャップに落胆しつつ、自分の体と正面から丁寧に向き合う日々を送っています。

七田式教育の再開

日本にいたとき、幼児向けの七田式教育を「もう少し年齢が高い小学生あたりにも実践できないか」と挑戦する学習塾でバイトしてました。そのこともあって、情報量と処理能力の獲得において同手法の効果は絶大だと痛感します。

日本にいた頃は自身の子供たちにも日々同教育を与えましたが、渡米をきっかけに辞めました。私は手法自体には賛同するものの、こうした手法や塾に通わせる親が、ただただ中学受験に対する費用対効果のみを追い求める様を見て辟易していました。

受験のないアメリカに来たから、もうフラッシュカードも不要かなと思っていましたが、AIの発達で考えが大きく変わりました。

今後世界は、所属するコミュニティで能力も文化も大きく異なり、そのコミュニティへのアクセスと帰属維持のために情報量と処理能力を磨く必要があることを痛感しました。金払って良い大学に入れたとて、その後良いコミュニティに属するためにそれ相応の脳を求められます。

私が住むワシントン州は良くも悪くも「牧歌的」で、都心の喧騒もむき出しの競争も身近ではありません。子供たちにはどこかのタイミングで命を削って自分の技能を磨きながら競争に参加する経験をしてほしいと思っています。それがお勉強ではなくても、ゲームでのスポーツでも何でも良いので。

3度目の社会保障国民会議

さて本題です。日本ではワールドカップの熱狂の裏で全く話題になっていませんが、実は今社会保障界隈では大変なことが起きています。最もこれは高市総理の”悲願”でもあり今更騒ぎ立てるのも無粋ですが、一言で言うと「社会保障の膨大な赤字財政に対して、財政規律を捨てて開き直った」と言えると思います。

出典:内閣官房 社会保障国民会議

現在日本では、2008年(福田政権)、2012-13年(民主党政権)に続く3度目の社会保障国民会議が行われています。国民会議とは国民にとって大切な議題を決める会議体に用いる名称で、別に一般国民が参加するわけではありませんが、同会議体で扱うテーマは毎回、国民生活に関わる重要なものになります。

出典:財務省 財政に関する資料

2008年の第1回は、それまで「低負担・中福祉」で赤字国債垂れ流していた状況から「中負担・中福祉」を目指す方向性を作り、社会保障の機能強化に向けた増税・負担増の土台を作りつつ、2012年の第2回は消費税を5%から10%に増税した分の社会保障への使い道が議論されてきました。

では3回目の今回のテーマは?というと、「給付付き税額控除」「消費税ゼロ」です。大学で財政面での社会保障政策を研究した私としては、もうこの時点で卒倒してしまいます笑 きっとこのブログをお読みの方の多くにも関わると思うので、私なりに解説します。

議論の背景:貧富差の拡大

過去2回の国民会議では社会保障の充実とその財源確保に向けた国民負担増の流れが作られてきました。しかし第3回は負担軽減の議論です。また、財源縮小を見越して社会保障の機能を縮小する(例:年金削減、保険医療縮小)といった議論はありません。この時点で、国債発行頼みで財政赤字を拡大させる方針であることは自明です。

出典:「新」経世済民新聞 【藤井聡】現代日本『五公五民』の真実~ 政府/財務省は今、貧しい国民に重税を課す過酷な政(まつりごと)を繰り返している(前編:かつて日本は二公八民で高度成長を実現した)

この負担軽減の議論が生じたきっかけは、国民負担率の増加と貧富差の拡大です。財務省の公式発表では、令和8年度の国民負担率は46.7%になる見通しです。

出典:財務省 国民負担率の国際比較

西欧諸国とも同水準の負担率となり、20年前から目指している「中負担・中福祉」の整備が進んでいるとも言えますが、もう一つ、国内の貧富差拡大も進んでいる点を考慮する必要があります。

出典:ニッセイ基礎研究所 「中間層」について考える

世帯所得500万円未満層の割合が急激に拡大。彼らの負担を下げて消費を刺激しないことには経済は活性化できないという考え方が土台にあります。

出典:厚生労働省 非正規雇用の現状と課題

低賃金な非正規雇用が約4割まで拡大し、正社員になりたいが非正規で働く人(不本意非正規雇用)の割合は減少傾向にあります。つまり、みんな低賃金な非正規雇用である現状に落ち着いてしまっています。

格差の是正という視点において、社会保障は「再」分配であり「サブシステム」です。つまり社会保障は、メインシステムである労働市場によって国民が得た所得を、税や保険料として徴収しつつ社会保障サービスとして再分配することで貧富差を解消する機能を持ちます。

出典:厚生白書 令和5年度版 持続的な賃上げに向けて

生産された富の労働者への分配割合が減少するトレンドは日本だけではなく世界的な話であることは労働分配率(=(雇用者報酬/雇用者数) / (GDP/就業者数))の議論から明らかですが、先進国比較においても日本は90年代以降からの落差が大きく、人口動態の変化(少子高齢化)も相まってそれほど大きな変化に合わせて制度を変える必要がありましたが、政治や制度は現在までに極めて硬直的だと考えています。その理由についての私見は後述。

出典:社会保障国民会議 有識者会議 第1回 有識者提出資料1-1

話を国民会議に戻しますが、拡大する低所得者層への救済措置の議論で毎回のように言及されるのは国際比較。今回の国民会議においても、有識者会議の第1回で翁百合氏が提出した資料に含まれます。

今回の国民会議では、こうした低所得者層の優遇による防貧機能拡充を志向するようです。

給付付き税額控除の検討状況

まだまだ非常に柔らかい状態ですが、現時点での最新の検討状況としては2026年7月16日の提出資料にあるこんなイメージらしい。必要金額規模も財源もまだ議論中なので、個人的にはまだまだ良し悪しを判断できる状態になさそう。

現在議論されている中間報告書案を見る限りにおいて、本施策は財政赤字の削減・マクロ経済への効果や困窮者の救済よりも、この施策を通じて各世帯や個人の所得をより正確・厳密に捕捉できるようにすることが主目的なんじゃないかと思ったり。それ自体は悪いことではないのですよ、特に源泉徴収されているサラリーマンには。第2回の国民会議において旧民主党が最低保障年金の話を持ち出したときに、「各個人の所得を正確に捕捉する方法が確立されてないのにどうやるの?」的な至極真っ当なツッコミに答えられず結局ポシャったのを思い出しました。

出典:Facebook 高島りょうすけ

それと各論ではあるものの個人的に気になってたのが給付の実施主体。貧困層に控除やら給付やらやるとして、それはどの組織がどうやってやるかという実務的な話です。先日、東大ハーバード26歳の芦名市長が出している声明を拝見しました。まさにこういう視点。コロナ給付金やらで自治体の現場が紛糾してたのも記憶に新しいかと。

この各論について、給付付き税額控除等に関する実務者会議(第9回)資料3にて議論に挙がっていたので課題意識はあるのでしょう。

2026年7月13日時点で議論されている中間とりまとめ報告書案(資料2)によると、やはり現場の負担が大きそうな書きっぷりだと感じます。窓口業務・例外対応をいかになくすか・最小化するかという視点でオペレーションを組まず、人力でマニュアル対応できてしまう現場に甘えて上流で細部まで握ることから逃げるからこうなるのよ。。。

「やめられない止まらない」政策

出典:PR TIMES あの「やめられない、とまらない♪」の歌を吉川晃司さんがアレンジ さらに、かっぱえびせんタイアップ曲「Lucky man」を書き下ろし

ただ、今回の国民会議の議題は、社会保障の枝葉末節に過ぎない、しかもこれまでの財源確保の議論を無碍にしているとは感じます。先に私のスタンスを明らかにしておきます。「現行の社会保障制度にメスを入れるなら、年金は結構盤石なので大した問題はない、やるなら医療介護、財政も問題だがそれ以上に供給体制の崩壊がヤバい、早急に国民の医療費負担を上げて需要とニーズを減らすべき」です。この短期的施策で財政を早急に健全化しなければ、金利も上がって打てる手がなくなり、社会保障の維持だけではなく経済が立て直しできないレベルまで落ち込むと考えています。このスタンスを以て、下記に現行路線への批判を書きます。

私は財政規律を重んじる立場、ネット風に言えば「ザイム真理教」的な考え方の強い人です。「給付付き税額控除」は新しい制度なので、検討や導入に相応の資源・時間を要することは理解できますが、財政健全化や医療介護の供給体制整備といった現行の社会保障制度の大きな課題を解決するものではないことはこの会議の議事録にもしっかり残っており、個人的には今回の国民会議は「手を動かしてる感」「問題の先送り感」が否めません。

最も、高市政権は経済安全保障・国家防衛を最優先課題として提起し、先の選挙でも大勝したと考えます。実際、対中包囲網に向けた国際協調やホルムズ海峡緊張における流通網の再構築といった外交面での活躍は他の政権に類を見ないほど大きな成果とスピードを見せていると思います。国外問題への対処を優先する本状況下で社会保障をめぐって国内を2分するような議論の提起は避けたいという考えは理解できます。

ただし、昨今の政府発表を見る限り、社会保障の持続可能性担保の面で私は高市政権の提示する方向性には賛同できません。この路線は1976年の赤字国債発行に端を発し、今現在まで「やめられない止まらない」状態です。

まず、2026年7月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針2026)」では、前年の「2025年度から2026年度の早期にPB黒字化を目指す」旨の方針を転換し、単年度でのPB黒字化は目指さず、今後は「総債務残高対GDP比」を主要管理指標にする旨が示された一方で具体的数値目標はありません。積極財政に基づく政府支出拡大でそれ以上のGDP上昇を実現すれば比率は下がるから結果オーライだよね、というシナリオですが、私はかなり懐疑的です。

出典:日本成長戦略の下での中長期的な経済・財政の姿に関する試算(令和8年6月24 日内閣府)

骨太の方針2026内で言及された「2040年までに名目GDP1100兆円」は、日本成長戦略会議の中で示された内閣府の資料が基になっています。この議論を理解する上で重要な「TFP上昇率」という指標について簡易的に説明します。まずは下記公式から。

GDP成長率(%) = 資本投入の成長率(%) + 労働投入の成長率(%) + 資本・労働以外の成長率(=TFP上昇率、%)

GDP(国内生産額)が成長するとは、今年は去年に比べて沢山生産できたということです。沢山生産するには、工場などの設備投資(=資本投入)を増やしつつ、その稼働に必要な人員×労働時間(=労働投入)を増やす必要があります。単純に考えて、資本投入を2倍、労働投入を2倍にすれば、生産量を2倍にできます。

旧来の経済学では、経済成長は主に資本と労働の投入の増加によって起こると考えられてきました。しかし昨今はその2つでは説明できない要素の割合が大きくなり、それらを全てひっくるめてTFP(Total Factor Productivity : 全要素生産性)と定義しました。

TFPの具体例として、技術革新、生産管理改善、教育水準向上、企業経営改善、インフラ整備といった要素が考えられます。例えばある工場で年間100個生産できたとして、翌年は設備と労働投入を変えずに生産手法を効率化して110個生産できたら、増量10個分は生産管理改善によるGDPの成長です。

出典:厚生労働省 労働白書 令和4年版 労働経済の分析 -労働者の主体的なキャリア形成への支援を通じた労働移動の促進に向けた課題-

最近はこういう図を嬉々として白書に入れてしまう厚労省。。。GDP成長率とTFP成長率には相関があることにしたがっているのですが、相関も何も、上述の計算式によれば、資本投入の成長率と労働投入の成長率が下がれば、GDP成長率とTFP上昇率が同じ動きをするようになるのですよ。国内に成長産業がなくて海外投資・人口減少で労働投入が減っている日本ではTFP上昇率が大きく見えるのは当たり前です。

出典:日本成長戦略会議(第5回)資料6(参考資料)成長戦略によるTFP上昇率の押上げ

資本投入や労働投入に比べてTFPの各要素は極めて計測しにくく、定義や内容・効果にも議論がありますが、今回の骨太策定にあたって根拠となった成長戦略では、AI投資やら色々やったらTFPめっちゃ伸びるはず!という仮定を置いて試算しています。

出典:公益財団法人 日本生産性本部 日本の全要素生産性(TFP) の推移

骨太方針の前提となっている「TFPを毎年1.1%から1.4%ずつ上げ続ける」ことがいかに難しいかというと、過去の上昇率を見れば一目瞭然です。バブル直前や東日本大震災後の復興くらいの勢いが必要になります。

そんな馬力を生み出せるかと言えば、私は非常に懐疑的です。従って、骨太方針は積極財政の名のもとに赤字は拡大するがGDPは伸ばしきれない、という結果になると考えます。

歴史的に見ると、莫大な累積債務を抱えた政府が採用した解決方法は3つしかなく、(1)デフォルト、(2)急激なインフレによる実質債務の圧縮、(3)時間をかけて地道に返済 です。民主主義下で(3)を採ったのはGDP比200%を超える債務を抱えていた19世紀イギリスのみで、100年かけて返済しました。大英帝国が「世界の銀行」になることができた所以です。1990年代カナダを挙げる学者もいますが、同国のGDP比100%程度の規模のの債務返済をこの議論に含めるべきではないかなと思います。

今日本がたどるのは(1)か(2)、(1)は世界恐慌の再来になりかねないためアメリカはじめ周辺諸国が許さない以上、(2)の道を取らざるを得ないでしょう。

一方で金利上昇を招く現在の状況ではかじ取りが極めて難しく、この状況は2013年にアベノミクスが実行された当時から多くの経済学者が懸念・指摘してきたことです。

さて、明るいニュースかどうかは分かりませんが、骨太2026の話に戻ると、私が望んでいた医療介護財政と医療供給体制の改善に向けた文言が盛り込まれています。

医療保険制度では、70歳以上の高齢者の医療費窓口負担割合について、低所得者等の必要な受診が確保されるよう適切に配慮することを前提として、原則3割となっている現役世代との間で年齢によらない真に公平な応能負担を実現する観点から見直しを行う。そのための改革工程表を2026年末までに策定する。

介護保険制度では、2割負担の判断基準の見直しについて2026年度中に結論を得る。

さらに、医療・介護保険における金融所得・資産の扱い、OTC類似薬の保険給付の見直しの施行とその状況等を踏まえた2027年度以降の対象範囲の拡大に向けた検討など、「改革工程」等に基づく取組を進める。

(中略)

医療情報化推進方針を策定し、医療機関の情報システムの刷新、特定機能病院等の緊急的な対応を含めたサイバーセキュリティ対策を進め、電子カルテ・電子処方箋の普及と情報連携、医薬品等のデータベースの構築、公費負担医療や予防接種・母子保健のデジタル化等、医療・介護に関する情報の連携と二次利用を含む利活用の基盤を構築し、切れ目なく最適なサービスを効率的に提供する。

特に一部の識者において医療費一律3割負担は後期高齢者医療制度設立からの悲願ですが、様々な圧力団体や族議員の移行で、話に挙がってもうたかたのようにかつ消えを繰り返してきました。本件は世代間対立を招きかねないデリケートな議題ゆえ、これだけでも頑張って実現してほしいと願うばかりです。

「正しさ」とは、権力が決めること

給付付き税額控除なんて枝葉末節のこと検討せずに本丸を攻めてほしいというのが上記の通り私の考えですが、そもそも論として、日本のみならず、なぜ世界中の国家は社会保障に大なり小なりお金を出すのか。

経済学者ピケティや彼の研究をIMFが解説した記事でも述べられていますが、社会保障が発達する前の19世紀から20世紀初頭までの「夜警国家」の財政規模は、どこの国も大体GDP比5-10%程度でした。国防・警察・司法・行政だけに特化すればその程度の財政規模で国家運営できます。そこから2度の大戦と冷戦を経て成熟していった「福祉国家」は、GDPの30‐50%を占めるに至りました。

上記のGDP比の規模感の検証において、私が学生だった頃と同様の分析を、最新のOECDデータ(2022-2023年)を用いてGhatGPTに作ってもらいました。夜警国家には「General Public Services(一般行政・議会・外交・徴税経費など)」「Public Order and Safety(警察・消防・司法・刑務所)」「Defence (国防)「Economic Affairs(産業・インフラ補助)」を含み、福祉国家には「Social Security(社会保障)」「Health(医療)」「Education(教育)」「Economic Affairs(経済絵施策・産業振興・公共インフラ)」「Housing(住宅政策)」「Environment(環境政策)」「Recreation/Culture(文化・スポーツ振興)」を含みます。

この表を見る限り、ピケティの分析は現在に至るまで正しかったと言えます。加えて、福祉国家が含む金額の中での最大規模を誇る社会保障の手厚さが、その国家の政府総支出の規模を決めていると言っても過言ではありません。つまり、国家の財政規模は社会保障の手厚さで決まります。

出典:wikipedia オットー・フォン・ビスマルク

社会保障の費用の大部分を占めるのは社会保険で、G7各国でも医療保険・年金保険で社会保障総額の7-8割を占めます。その起源はドイツ帝国ビスマルクまで遡りますが、こうした莫大な金額を投じる目的は、「国家維持のための防貧」、つまりは国民の中に絶対的・相対的貧困が生まれることを防ぐことです。貧困は、政情不安や疫病蔓延、治安悪化といった様々な弊害をもたらします。そしてこれらは結局、国を運営する側の治安維持政策です。

つまり私たち国民は、国家の治安を維持するために保険料(あるいは税・国債)を負担して社会保障を担っています。クソ田舎で地域全員が貧しくも矯正しながら育った私としては、こうした負担と拠出には理解を示すことができますが、共同体意識の希薄な都心部で産まれ育って生活する人たちが所得の数割を社会保険料として天引きされることに強い不満を抱くことも、また強く共感します。

少し偏った見方かもしれませんが、社会保障の「功」はしっかり理解されるべきだと思います。戦前から戦後まで、子供は労働力であり女性は家庭に縛り付けられ親の介護も担いました。社会保障の発達によりこの状況は改善され、高齢の両親との別居も可能になり核家族化が進むとともに、女性の就労・社会進出も進みました。

現役世代で小さい子供を育てる私としては、今後も保育や教育への補助を拡充してほしいと思う一方で、財政負担拡大への懸念から、主に医療介護費の抑制を積極的に行ってほしいと考えます。この考え方には少子高齢化対策という大義名分もあります。

出典:厚生労働省 我が国の人口について

一方で、少子高齢化によって国民の人口ピラミッドの形が変わり、子供や子育て世代の割合が減り、高齢者の割合が増加した中で、高齢者の医療介護費用を拡充してほしいとする意見もまた尊重されなけばならなくなりました。

私の恩師もずっと仰ってましたが、こうした状況下での制度は権力と歴史で決まります。「正しさ」ではありません。何が正しいかという哲学的な問いではなく、現実的な政治権力の方針と過去から引き継いできた制度的遺産が、未来を決めるのです。

現行の高市政権のみならず、それ以前の旧民主党政権を含めた過去の体制も同様の圧力団体・支持母体の下で旧来の制度を大きく変更するなく継承してきたし、高市政権後の今後の体制も、日本の社会保障制度という遺産を大きく変容させることはないと予想します。

私物化される世界

出典:Yahooニュース 決勝直前にまさかの火種…物議を醸すアルゼンチンの“横断幕問題” 再犯扱いで処分強化の可能性も【W杯】

アルゼンチンに忖度丸見えな判定だったり、レッドカードで次の試合出場停止のはずだった選手が大統領の一声で出場可能になったり、金と権力という言葉が象徴的な今回のワールドカップ然り、世界が各国の支配者や有力者によって恣意的に統治・支配されていることを隠さなくなってきました。

出典:ロイター 米司法省、トランプ氏や親族の税務調査「永久禁止」

トランプ政権のやりたい放題を揶揄する言論は今に始まった訳でもなく多数存在しますが、貧富差が拡大し世界や国家単位での共通理解は減衰し、バラバラかつ強者に私物化される世界は、そう遠くない未来に来るように感じます。

出典:wikipedia 神聖ローマ帝国

ただ、バラバラ・私物化というトレンドは歴史的には当然の流れだと思っています。主権国家による中央集権的支配が衰退し、私たちが回帰するのは中世・近世のバラバラ感。主権国家は一応存在する者の、支配は一元的ではなく社会は多層的。一橋大学2001の「絶対王政はいかに絶対的だったか」論述を思い出します。

17世紀から18世紀におけるヨーロッパは絶対主義あるいは絶対王政の時代と呼ばれる。
とりわけルイ14世が統治したフランスは典型的な絶対主義国家とされているが、このような政治体制がどの程度「絶対的」であったのかに注意しながら、その特徴を述べなさい。(400字)

こうした世界情勢の中で、支配するか・されるかのどちらかしか選択肢がないならば、私は支配する側に回り、その後は死ぬまで自分の研究とビジネスに打ち込むことを夢見て216億円稼ぐことにしました。日本でもアメリカでも中国でも、その地域の支配層の意思決定や思惑に振り回されます。トランプや習近平に歯向かえば社会的・物理的に抹殺され、円資産は積極財政の失敗に伴う円安で現存します。

常に何かしらの影響を受けるなら、なるべく富を蓄えつつ自身の軸を多元的に置きリスクヘッジするべく、将来のプランを立てました。本当に私が216億円貯めた暁には、どんな生活が待っているのか。木を隠すなら森、成り上がりを隠すなら貴族層。群馬の貧農から成り上がり、アメリカまでやってきた私は、自身の階級上昇を古代ローマのエクイテスに重ねています。

出典:wikipedia エクイテス

エクイテスは、古代ローマ時代に登場する階級を指す言葉です。平民(プレブス)と貴族(パトリキ)が存在する中で、平民から成り上がって貴族に合流した人たちでした。その社会的背景は以下の通りです。

 ローマ共和政の時代に、前3世紀末ごろからあらわれた富裕市民層を、元老院議員などの地位を独占していた貴族(パトリキ)と区別して騎士(エクイテス)といった。本来は騎馬で軍務に従事する兵士を意味しており、馬を養うことのできる富裕者であったことから、重装歩兵である平民に対して貴族を意味していたが、前3世紀末に元老院議員となる層と区別され、その下層に位置づけられる層を意味するようになった。

徴税請負人として富を築く  

彼らは従来の貴族と、前4世紀ごろから登場した新貴族(ノビレス)が元老院議員として既得権を持っていたのに対して、前3世紀のポエニ戦争によって増加しはじめた属州徴税請負人となったり、商業に従事したりしながら富を蓄え、騎士階級を形成させた。

ローマという一つの都市に誕生した古代ローマは、ポエニ戦争の勝利等を経て領地を急拡大します。拡大した領地は、主に給与の代わりとして軍人に与えられますが、この土地の「運用」が上手だった人たちが一気に資産を拡大して成り上がったのです。

出典:世界史の窓 エクイテス

現代に例えるなら、GAFAMというプラットフォームを「運用」してジェフベソスやビルゲイツが超富裕層になる、みたいなもんだと思います。なお、土地の管理を代行する「徴税請負人」という高給な職業も急拡大しましたが、上記の例だとエンジニアやデータサイエンティストがこれに相当するんだろうなと思っています。そこで得た余剰資本を大幅にレバレッジさせて財を成し、そして支配階層に迎合します。

歴史的な世界の支配者コミュニティ

以前の記事でも触れた通り、私は数年にわたって日本の華族のその後を追っていた時期がありました。その結論は、未だ華族は健在で、日本の大企業の多くは華族層の影響下にあるというものでしたが、この結論に数年と言わず数日でたどり着くことができた方を発見し、自身の効率の悪さに愕然としました笑

電通に入ると、まず資料室にデンとある『日本財界系図』という巨大な本を閲覧することになります。

そこには日本の大企業・大資本の株主、経営者の家系図、相関図が網羅されています。驚くなかれ、

●日本の大企業といわれる法人の9割くらいは

●5つか6つの家族の持ち物

●それらの家族同士も婚姻している

●それらの家族の子女はさらに政権与党の有力者の子女と婚姻している

という事実が普通に名前と線で示してあります。

電通マンとは彼らに奉仕する職業であること、仕事を遂行するにあたって、「どこの家族の系列にある資本か」を間違えないこと、を叩き込まれます。

卑近な例ですが、三菱UFJの担当として宴会を仕切ったときにアサヒビールを搬入したりキヤノンのカメラで撮影したりして出入り禁止になったり降格されられたりした人もいました。  

電通が日本を操っていたとか、お笑い草の陰謀論です。

日本は5〜6軒の家族の損得勘定でみんな仕事を得たり給料をもらったりして生きているのです。

そしてそれはどこの国でも産業革命以後、資本家階級と労働者階級が発生したこの200年ほどはまあ、当たり前のことです。

だからこそそういう「家族さん」を飛び越えて資本の地図を塗り替えたイノベーティブな創業者、ジョブズだのゲイツだのベゾスだの孫だの柳井だのの出現は社会の変革のために大切なのです。

まあ、そこからまた新しい家系が始まるわけでもあるんですけど。

出典:X 田中泰延

私は、この方が電通の資料室にある『日本財界系図』に記載された内容と同じようなことを調べていたのでしょう。なおこの書籍、国立国会図書館から見ることができるので超おススメです。

出典:トマ・ピケティ『21世紀の資本』

財閥解体と言えど、日本には貴族は今も存在し、アメリカには超富裕層が存在します。そして私の調べた範囲、いくつかの中心的な集団があり、重複するメンバーがいつつもそれぞれが拡大を志向して時に対立します。エプスタイン問題は、彼らが互いをパージし合う過程で使われた材料だと捉えています。

出典:日テレニュースNNN

もはや誰も覚えていないかもしれませんが笑、2026年5月26日に当時巨人の監督だった阿部氏が身内への暴力で逮捕されました。本件に関して私が驚いたのは、彼の続投を援護する人が球団内に殆どおらず、速攻ではしごを外されたことです。

出典:中日スポーツ 【巨人】山口寿一オーナー、阿部慎之助氏の復帰署名13万筆超に「大きな力になる」…ただ監督人事には「また別物」

「暴力だからダメ」ならば、これまでも球界には暴力沙汰を起こしてきた選手や監督が少なくないものの、彼らへの処分の重さ・軽さにはばらつきがあるように感じます。つまり、阿部氏はコミュニティから弾かれた、一連の報道を見て私はそう捉えました。

エクイテスとして支配階層に迎合した先にある私の次のステップは、コミュニティからの排除に怯えて必死に回りにゴマをすり続ける醜い人生なのかもしれません。そんな人生を進もうとして良いのかどうか、葛藤しながら日々精進。

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